14- 敵地へ
いい加減な男、ジーク。しかし、その情報収集能力だけは、侮ってはならない。
「西と東のナンバーツーが、共謀して、争乱を引き起こそうとしているだって……!?」
ジークのもたらした情報に、ゼクトは困惑するばかりだった。
「んぁあ。ここからちぃーっと南に下ると、馬鹿っ広い砂漠地帯があるだろう? あのどっかに、奴さん達は、身を潜めて機を窺ってるらしいんだわ、これが」
バルドは冷静に、茶色の瞳を光らせる。
「成る程な……自分の手は汚さず、東と西でドンパチやらせて、疲弊したところを、温存していた戦力で制圧・統治する――か。ったく、汚ねぇ輩だぜ」
バルドは、自身の悪行に誇りを持っており、貧しい民から金や命を奪う真似だけはしない。ある種、潔さを備えた盗人だ。
だから、この話を聞いた以上、途中で降りる可能性は低いだろう。
フィナは始終、黙って聞いていたが、ジークに領主館から連れ出された時点で、諦めはついていたらしい。
「つきあってあげるわ」
皆をまとめるお姉さんらしく、フィナはそう言った。
二度と戻らない日々が返ってきたようで、ゼクトは、知らず、表情が緩んだ。
そして、思った。絶対、何があっても、彼らを守ろうと。
決行は、明日に決まった。今この時にでも争乱が起こりかねない状況なので、本当は今にでも出かけたいのだが、彼らとて、人間だ。今日だけは、ゆっくり休んで、明日からに備えるのが賢明だろう。
出掛けの朝、ふと、ゼクトはここに居ない一人を思い、小さな胸の痛みを覚えた。もう一度、呼びかけるべきだろうか。
いいや、それは、自分の我侭だ。
ルイスは、居場所を見つけたのだ。やっと、安寧を得られる地を。だから、邪魔立てはできない。
首を振り、ゼクトは、もう一度会いたいという想いを、心の奥に封印した。
一体、どこから情報を仕入れたのやら、ジークが突き止めた秘密の地下通路を抜けて、南の砂漠へ。
その先に待つものは――……
ゼクトは、最悪『力』を露見する覚悟で、彼らと共に、魔の巣窟へと乗り込んだ。
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